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安全なリチウムイオン電池 LiFePO4 [リチウムイオン電池]

こんにちは、亀仙人です。


リチウムイオンの危険な面が強調されていますが、実際世の中にある多くの
リチウムイオン電池は本質的な危険性を持っています。


ところが色々調べていくうちに「安全な」リチウムイオン電池なるものがありました。
「リン酸鉄リチウムイオン電池」 「LiFePO4」と呼ばれるもので、次のような
安全性を持っています。

(ラジコンで多用されるリチウムイオンポリマー電池 LiPOは全くの別物でよく燃えます(笑))

  ・過充電・過放電でも燃えない。
  ・外部ショートでも燃えない。
  ・火中に投入しても燃えない。
  ・釘刺ししても燃えない。
  ・安価

つまり、「燃やそうとしても燃えない」という性能を持っています。


しかし、良いことばかりではありません。

  ・重い
  ・セル電圧が3.2V程度と1割以上低い。
  ・重量あたりの容量では2割程度低い。

重くて低容量・低電圧ですので、同じ性能を得ようとすると容量の大きいセルを選択
したり、セルの個数を増やす必要があり、更に重くなってしまいます。

この重さがアダとなって携帯機器やEV用としてはイカモノ扱いを受けていますが、
家庭用・非常用などの重量がデメリットにならない用途ではそこそこ採用されているようです。



この安全性が見直されれば、時代がリン酸鉄リチウムイオン電池に追いついてくる日が
来ることでしょう。




リチウムイオン電池 発火の原因? [リチウムイオン電池]

こんにちは、亀仙人です。


K国製のスマホの発火で話題になっています。

当面の対策として充電の上限を60%となるようにファームウェアを変更するようです(笑)。


と笑ってしまいましたが、実はこの対策はいい線を行ってるような気がします(再笑)。



リチウムイオン電池を発熱・発火・爆発させないための安全な使い方は、先に書いたように、

  ・100%充電しない、過充電しない。
  ・高温状態で充電しない。
  ・急速充電しない。
  ・満充電状態で長期保管しない。
  ・完全放電しない
  ・高温・低温のところに放置しない。
  ・高いところから落としたりしない。
  ・釘を刺すなど物理的に貫通させない。

です。


ここで充放電に関わることが5項目も占めているように、リチウムイオン電池にとって
充放電は鬼門です(笑)。

充放電をしてはいけないわけではなくて、セルにストレスを与えないように細心の注意を
払ってそっと制御しないといけないのです。

スマホでは3.7Vの1セルのみなので、車載用のように多くのセルのバランスに
気をつけル必要はありません。

しかし、そんな場合でも「電池の容量はなるべく多く使いたい」という要求があります。


容量を増やすために大きい電池を使うよりも、0~100%の範囲をなるべく広く使えた
方が同じ容量でも多くの電力を取り出せますが、実はここに大きな落とし穴があります。
設計上のジレンマでもあります。

順に見ていきましょう。

  ・100%充電しない、過充電しない
   なるべく多くの電力を取り出すためには限りなく100%近くまで充電したいという
   欲求(要求ではない)がありますが、100%充電と過充電は紙一重ですので
   電池にストレスをかけてしまうリスクは増大します。
   
  ・高温状態で充電しない
   高温状態で充電すると電池にストレスがかかります。
   実際には充電回路の中に温度センサも組み込まれて、慎重に充電が行われます。

  ・急速充電しない
   急速充電できないスマホは、当たり前ですが使い勝手が悪いです(笑)。
   しかし、許容される範囲内で最大の電流を流してなるべく短時間で充電したいという
   欲求があります。

   これも100%充電と同じで、温度を監視しながら慎重に充電電流をコントロールする
   わけですが、急速充電の方が発熱も多くセルへのストレスも大きくなります。

  ・満充電状態で長期保管しない
   スマホは放電終了で置かれるよりも充電終了で置かれる事のほうが圧倒的に多いですが、
   実は満充電での放置はセルへのストレスとなります。

   トータルでは、満充電あるいはそれに近い状態の時間が圧倒的に長いと思われます。

   ちなみに、ファミレスなどでオーダーに使われている某社製ハンディターミナルは
   オーダー時以外は常時充電スタンドに乗っていますが、1年以内にほぼ全数が
   電池膨張で交換となります(笑)。

  ・完全放電させない
   電池からなるべく多くの電力を取り出したいわけですから、放電終了電圧もなるべく
   低くまで使いたいという欲求があります。

   しかし、限界まで放電させようとすればするほど、セルにはストレスがかかります。
   全容量放電してしまわないように放電終了するように設計します。


今回の発火の原因がセルにあるのか、充電回路にあるのか、充電ソフトにあるのかは
まだわかりませんが、リコールによる電池交換は大きな費用が発生してしまいます
(推定1400億円という噂)ので、実施する緊急対策が「(ソフトで)60%で充電終了」というのは
なかなかの良案です。

ユーザーの満足はとても得られないと思いますが。。。



リチウムイオン電池 最も危険な使い方? [リチウムイオン電池]

こんにちは、亀仙人です。


某K国製スマートフォンでリチウムイオン電池に起因する事故があり、話題を呼んでいます。

それに絡めて、リチウムイオン電池の危険性と回避策について書きましたが、
世の中には敢えてその火中の栗を拾いに行っている(笑)方たちがいます。


私の知る範囲で、リチウムイオン電池を最も危険な状況に追い込んで使っているのは、
ラジコンマニア ではないかと思います。
(違ってたらゴメンナサイ・・・)

特に航空系のラジコンマニアと呼ばれる人たちは、リチウムイオン電池の限界を
突き抜けたような使い方をしています。

ここでよく使われるのはリチウムイオンポリマー電池と呼ばれるものです。
シート上の素材を重ねてアルミシートでパウチしたもの、見た目はレトルトカレー
のような感じで、スマホなどに使われているものとは形状が異なります。


20150116163523_21210.jpg


こんなやつです。
私は車載用にこれの親玉みたいなの(A4サイズぐらいw)を検討したことがありますが、
しっかりケーシングしないといけないなという感じでした。



リチウムイオン電池はストレスを加えると発熱・発火・爆発の恐れがあります。
そこで、リチウムイオン電池を安全に使うための条件として

  ・100%充電しない。
  ・急速充電しない。
  ・完全放電しない。
  ・満充電状態で長期保管しない。
  ・高温・低温のところに放置しない。
  ・高いところから落としたりしない。
  ・釘を刺すなど物理的に貫通させない。

と提言させていただきました。

しかし、ラジコンマニアの方々の書いているHPを見ていると、このうちの太字で書いたものは
日常的に無視されています(笑)。

物理的な破壊以外のことがすべて行われています。
そして、発火事故もそこそこ起きているようです。
(亀仙人はラジコンマニアではありません・・・)


ではなぜこのような使い方をするかというと、
航空系では重量・容量・放電性能・充電性能が特に要求されるからです。
航空系ラジコンというのは「飛行機、グライダー、ヘリコプター、ドローン」などです。

電池も含めた機体を空中に飛ばしてその操縦技術や性能を競うのですから、

  ・何よりも軽くないといけない。
  ・瞬発力、つまり大電流が取り出せないといけない。
  ・大電流をより長い時間持続できないといけない。
  ・100%充電し0%まで全部使い切ろうとする(笑)。
  ・時には100%から更に充電しようとする(笑)。
  ・着陸後直ちに電池交換できるように予備電池を充電しておく。連続して飛行させる
   ためには、複数の電池を用意して常に満充電スタンバイさせておかないといけない。
  ・使用したリチウムイオン電池はすぐに充電して次にスタンバイさせる必要があるので、
   短時間で急速充電できないといけない。このとき大電流をぶち込めるほど良いとされる
  ・フルパワー状態で使用するので電池、モーターともに発熱する。
   真夏の過酷な環境下でフルパワーを出すと、電池は相当な高温に晒される。
  ・トラブルで落下したりすると、電池にも相当な物理的衝撃が加わる。

という状況で使用されます。
すべて安全策とは真逆ですね(笑)。

「釘を刺さない」ということぐらいしか守れていません。


私はラジコンマニアを揶揄するつもりはなくて、リチウムイオン電池のことを
調べ始めたころから、実は尊敬の目で見ています。

この方たちは「自己責任」ということをよく分かっておられる。
それは拝見したHPの内容からもよく伝わってきます。

その上でリスクを負って性能を追求しているのです。


「リスクを負う」という言葉は世間ではよく耳にしますが、他人を巻き添えにしない
という条件下で最もリスクをとっている事例ではないかと思います。

そして、当初は無謀に見えたのですが、そういう極限を追求する使い方が、実は
リチウムイオン電池の性能・安全性・使い勝手を相当押し上げたように思えます。


私は小心者なのでこのような限界の使い方はとてもできません。


ちなみに亀仙人の設計の最低基準は、

  ・燃えない(笑)
  ・壊れない
  ・誤動作しない

ということですので、ちょっと相容れないですね・・・。


オチガアリマセン






リチウムイオン電池と原発の意外な共通点? [リチウムイオン電池]

こんにちは、亀仙人です。


K国製のスマホのリチウムイオン電池が爆発したと報道されました。


スマホ爆発.jpg


亀仙人は車載用のリチウムイオン電池システムを一から設計したことがあり、
少しは詳しいので、解説してみます。


リチウムイオン電池は小型・軽量・高性能・高容量で、それまでの電池の性能を飛躍的に
押し上げましたが、同時に発火・爆発の危険も増大しました。


リチウムイオン電池の中は薄いフィルムで正極(+)と負極(-)が遮られています。
そして、このフィルムを通り抜けてイオン化したリチウム原子が移動することで充電・放電
が行われます。

ところでこのリチウムイオンはなかなかの曲者で、ストレスを与えると金属リチウムが析出
(結晶みたいになる)してしまい、針状に成長する性質があります。



薄いフィルムで分離されているところに針状の金属リチウムが成長してしまうと
「ショート」が起こります。電池内部で起きてしまうショートなので、打つ手がありません。

リチウムイオン電池は、その持てるエネルギーのすべてをそこショートした部分に
集中させます。

その結果、発熱・発火そして最悪の場合には爆発します(笑)。


リチウムイオン電池が発火・爆発するのにはこのように構造的・本質的な理由があり、
長所であった高性能・高容量が裏目に出て、一気にそのエネルギーを放出してしまいます。


結論から言うと
リチウムイオン電池はストレスを受けると発熱・発火・爆発する(笑)
それは構造的・本質的なもので、そのリスクはなくならない。
これが現実です。

この現実を踏まえた上で、いかに安全に使うかという回避策を取るしかありません。


リチウムイオン電池の受けるストレスとは
 ・高温
 ・低音
 ・過充電
 ・過放電
 ・物理的破壊
 ・外部ショート
です。すごく当たり前なものです。

現状のリチウムイオン電池の制御システム(充電・放電・管理)は常にこれらの
ストレスを電池に与えないようにするために「外部的に」行うものです。

もし管理が不十分であると、金属リチウムが内部で針状に成長しフィルムを突き破った
瞬間に、このセルは内部ショートを起こし、発火してしまいます。

私は冗談でこれを 臨界  と読んでいました。
(発火させたことはありませんが)



もうおわかりだと思いますが、本質的な危険性を孕んでいて、「外部から」そうならないように
必死で制御しているもの、そう 原発 と根っこは同じなのです。


リチウムイオン電池が危ない、原発が危ないのではなくて、
それは本質的なものです。

それを必死でコントロールしてかろうじて安全そうな状態をキープしているだけなので、
ちょっとしたことで躓くと、危険な本質に飲み込まれてしまいます。
そうなってからはもうコントロールする手段がありません。


リチウムイオン電池と原発ではその規模も危険度も桁違いですが、
意外なところに共通性があることに驚きます。


今回のスマホ発火の原因は知りません(笑)が、日常的に回避できる方法がいくつかあります。

 ・100%充電しない。
 ・急速充電しない。
 ・完全放電しない。
 ・満充電状態で長期保管しない。
 ・高温・低温のところに放置しない。
 ・押しつぶしたり高いところから落としたりしない。
 ・釘を刺すなど物理的に貫通させない。

「外部的に」できることに限られますのでこの程度ですが、
これを気をつけるだけでも危険を遠ざけられる可能性はあります。


デハ  ゴアンゼンニ・・・







亀仙人の仕事術  49.事務方の改革(案) [仕事のウンチク]

こんにちは、亀仙人です。


さて、過大な残業と闘った後に亀仙人が次にやりたかったことの一つに
「事務方の改革」がありますが、その前に独立を決意して会社を辞めて
しまったので実現できていません。


昨今ではIT、ITとまことしやかに語られますが、先に書いたエッセイ
頑張ってしまったSEの話
にあるように、IT(インターネット技術)を使っただけでは業務は効率化できません。

ITで効率化するためには、そのお膳立てとして効率化された業務の流れが
必要です。そのためには、主として事務方の改革が避けられません。


こういった意識を技術屋目線で改革する目的で書いた文章を紹介します。
(事務の方で気を悪くされたら申し訳ありません・・・)


*--------+---------+---------+---*
49.事務方の改革(案)

事務方には電卓を叩くのをいとわない人が多い。

電卓◯級などという資格を誇らしげに語る事務員もいて、「電卓を叩くのが仕事」
と豪語している人が多いのに驚く。

山のような伝票の束を目にも止まらぬスピードで電卓叩いて処理していく様は圧巻
ではあるが、計算・検算そして検算結果が違った場合には再検算と都合3度ほど
マシンガン状態となる。

酷いのになるとEXCELで集計した表を再度電卓に入れたりしている輩もいた。
本人は長時間電卓叩くことで非常な充実感を抱くようで「あ~今日もよく仕事したゎ!」。


1images.jpg


ここでちょっと気になった。
電卓を叩いて出てきた結果には仕事としての意味があるが、電卓を叩くこと
そのものには何の生産性もない。だから電卓を叩くことそのものに充実感を
感じるのはおかしい。

少しでも電卓を叩く量を減らすような工夫を行ない、できればシステム化
(必ずしもコンピュータ化のことではない)するような発想をしないと、事務方の
生産性はいつまでたっても向上しない。しかし、こうような状態では本人が電卓を
叩くことに達成感を感じているので改善の機運は全くない。


これは日本のホワイトカラーの生産性のなさの縮図のように思える。
生産性向上はまず製造現場が先行し(すでに世界一のレベル)、設計・開発
部門でも早くから取り組まれている。なのにホワイトカラーと呼ばれる事務方の
生産性は目を覆うばかりである。


意欲のある企業では大きなコストをかけてグループウェアなどを導入したりするが、
そのようなシステムを導入するのは、導入することそのものが自己目的化して
しまって、現在の業務スタイルのどこに非効率なものが潜んでいるのかが検証
されることは少ない。
(ちゃんとしたSEが取り組めば最初にそこを検証するが、昨今はSEのレベルも
 低下しており、業務全体の検証を正しく行えるSEは少ない)

酷いのになると「パソコンを導入して管理します」などという言葉を実際に聞く。
信じがたいが、彼らは「パソコンが勝手に仕事をしてくれて、集計や分析結果が
自動的に出てくる」と本気で思っている。

パソコンに詳しくない人をバカにするつもりはないが、そういう人が現実にいる。
(10年ほど前には多数生息していた)


では、この事務方の業務を技術屋が考えるとどうなるか。
(筆者は売上高30億程度の企業の販売管理システムを構築・運用した経験がある)

まず手作業で十分効率化できるように業務の流れを再構築する。
この段階で問題点や非効率なボトルネックを排除する。
(これをできないSEが今は多い・・・なぜならばコンピュータ化そのものがSEの目的だから)


この段階で根本の流れがうまく構築できれば、業務のボリュームによっては
手作業のままでも十分効率化が達成できる。システム化とパソコン化がなんの
関係もないことの証拠である。

SEが正しく仕事をすれば、パソコンなしでも効率的な業務システムを構築することが
可能である。
(この後、作業ボリュームを軽減する目的でPCを使うのが正しいシステム化である)


例えば、先にも示したような残業時間削減事例では、管理・集計を代休・有給休暇
システムとの連携まで考えると、事務方の業務ボリュームは過大となり悲鳴が上がる。

多くはここで人員の追加が必要だから人件費が増大すると言い、、またパソコンで
管理する必要があるのでシステム構築費用がいるとわめく。

いずれも事務方コストの増大に繋がるが、経営者もそんなもんだと思っているので、
結果的には非効率な業務の流れを放置するか、無意味な投資をしてしまう。


亀仙人の事例
事務方で全部を集計しようとすると膨大な単調作業と闘う羽目になるので、
この集計作業を分散しなければ非効率に陥ると考える。

残業管理は管理者の職務であり、残業・代休・有給を関連付けて管理する
作業を各部署の管理者にさせればよい。

総数としてどれだけの代休・有給を各個人が保持してるかは事務方で管理する
必要はあるが、毎月の集計と代休振り替えの処理はは管理者がやればよい。

つまり、各部署で1次集計させてしまうシステムとする。
そうすれば事務方の業務ボリュームは増えるどころか減るはずであり、人員投下や
システム投資は一切不要である。

今ならExcelのファイルの部分入力を各部署にさせるだけで、個別データも
集計結果もすべて人事で把握可能となる。

(管理者の守備範囲はせいぜい15人程度が望ましい。それ以上の組織になる
 場合は係長などのサブリーダーにさせればいいだけである。これは組織論になるが)


これぐらいに発想ができると事務方の強さ、引いては組織の強さが出てくる。
全体を見通すことができて強靭なバックオフィスを構築できる。
事務方が「与えられた仕事」「しなければいけない仕事」という固定観念で捉えていると
前進しない。


書類のフォーマット
ついでに言うと、事務方の作成する各種手続用紙のフォーマットは最悪である。

サイズ・縦横もバラバラであり関連性がない。なぜならば、全体を通したシステム
設計(という概念がない)の上に成り立つフォーマットではなく、なにも考えていないか
目先の作業の多少の軽減程度しか視野に入っていないからである。

ひどい場合は新人のお姉ちゃん(ワープロ◯級とかの)に勝手に作らせたりするので、
本当にバラバラである。


役所の書類のフォーマットを見ればわかるが、住所・氏名・性別・生年月日・
電話番号を各書類毎に記入させる。同様の書式は社内にも多数存在する。

(私事だが、先日役所に提出した書類は13枚もあった!そのうち8枚に住所・氏名・
 性別・生年月日・電話番号を記入させられた。最悪!)


結論:
事務方・ホワイトカラーの生産性向上は、少し前から世界的なトレンドである。
(最近はITと一緒に語られることが多い)

それほどに大きな無駄が、無駄と意識されないままに放置されてきた。
発想を変えればそこに宝の山が眠っていることになる。

製造現場の生産性世界一の日本でホワイトカラーの生産性向上ができないはずが
ないが、大きな意識改革を必要とするのは明らかである。


名簿入力の事例
事務方の業務と類似した事例を紹介する。

10年以上前になるが、大学時代のクラブのOB会名簿を一新する必要があり、なぜか
パソコンが使える(OB会役員は中高年主体で、当時はPC使える者もほとんどいなかった)
という理由だけで、私に役目が回ってきた。

60年もの歴史があり、約700名のOB名簿で元資料は以前に作成した印刷物のみ。。
その上に手書き修正があったり手書き追記があった。
郵便番号は5桁の時代のままである。


名簿.png


これを米つきバッタになって日がな一日入力し続けるのか、それとも何か工夫するのか・・・?
20名分ほど入力してみたが、とても理系の人間には耐え難い単調業務であることがわかった。
(理系は単調作業に弱い!)

ちょうどスキャナを導入したこともあり、印刷物の識字率95%というふれ込みのOCRの
性能評価をしてみたかったこともあって、OB名簿をOCRにかけてみた。

結果はボロボロで、確かにミス率は5%程度ではあったが逆に5%もミスされると
総チェックしないと使い物にならないということもわかった。
(名簿なのに「糞」とか「屍」とかいうミスが頻繁に出てくるので、スルーしたら大変!)


曲がりなりにも95%ほどは文字入力しなくてもよくなったのだが、総数チェックを1人で
やらないといけなかった。紙面と画面の間を視線を移動させながらの1人チェックは思いのほか
重労働だ。(文系の人は辛抱強い!)


ここで更に工夫した。
EXCELの表にも対応した「読み上げソフト」なるものがあったので、これを入手して試してみた。
入力済みのデータをPCに読み上げさせ、耳でデータを聞いて元の印刷物名簿を目で追う。

PCの発声はスカだが、これがなかなかに具合がよく、資料とデータの突合せはスムーズに
完了した。郵便番号の7桁化は一部ソフトを作成した。

一度データを作成してしまえば、年度別や学部別、地域別など異なった切り口で
データを再利用する事が可能だ。
(手間は一時、効果は半永久的。これは技術屋の常套句)


携帯電話の番号やメールアドレス(会社でない)を登録しておくと、毎度まいど往復はがき
でない連絡・通達が可能となる。
もちろん、往復はがきの宛先もプリンタ印刷なので、イベントの準備期間は大幅に短縮となる。
(今までは現役学生を動員した人海戦術だった)

OB回事務局の負担は大幅に軽減でき、OB会会長からは厚く感謝された。
(700人でこれだから、7000人だったら本当に死んでたかもしれない)


以上だが、文系の人のアプローチとは明らかに異なる。


理系の人間は思いのほか単純業務に弱い。(文系の人は辛抱強い!)
ミスをする。そのミスを探して修正するのに入力作業の何倍もの労力を必要とする。
単調業務では集中力を維持できず、ミスがミスを呼ぶ。

人間工学的に考えてもこれはやむを得ないことで、根性だけでカバーできない。


理系の人間は、そういう場合に「何か工夫できないか?」と考える。
自分自身が殺人的な単調業務と闘うかどうかの瀬戸際であるから必死である。

人間、必死になるといいアイデアが湧く。
出てきたアイデアが先の「OCR」「読み上げソフト」「郵便番号7桁化マクロ」である。


さて、文系の人ならどうしただろうか?
やっぱり人海戦術?



(事務の方で気を悪くされたら申し訳ありません・・・)




豊洲市場の設計信頼性? [築地移転問題]

こんにちは、亀仙人です。


素人ながら発言させていただいております。


豊洲市場の建屋の地下が盛土されておらず、4.5mの高さの空間であることがわかりました。


これまで、

  ・汚染土壌を除去し、そこを4.5mの盛土をして覆っているので絶対安全である。

  ・4.5mもの盛土はオーバースペックですらあるのでまったく問題ない

  ・これまでに7回も汚染状況の確認をしているので、8回目も(きっと)問題ない・・・トオモイマス。

と安全と安心がきちんと担保されていることを強調してきたのが

  ・たとえ盛土がなかったとしても10cm厚のコンクリートがあるので法律的に問題ない。

と掌を返してきました。



明らかに問題点をすり替えてきています。
法律は関係ありません。

結果的に安全かどうかではなく(安全でないと困りますが)、
問題は、安全を期して行われた計画が施工段階で改変されたことです。



これは私の業界でいうと、SEが種々の問題を勘案して決定した仕様書を
プログラマが無視して違うものを作ってしまったことと似ています。(たまにあります)

この場合、動作に問題がなかったとしても、その後に起こるかもしれない事象に対する
備えができているかどうかは不明ですので、SEとしては採用できません。

プログラマも知識はありますので、少し頭の回る人なら「こういう方法でもできる」
と言い出す事があります。しかし、私は徹底的にこれを排除してきました。

なぜならば、「設計の責任は?信頼性はどこにあるのか?」ということです。
あらゆる条件を吟味して決定した仕様を、そこまで考えていない人が改竄したこと
になるからです。

目指しているのは「動けばいい」ものではないのです。



設計の信頼性を考えれば、結果的に安全だったとしてもこれは看過できません。


そして、建物下にも多くの地下水検査用の井戸があるのに、今までの
安全性検査において建物の地下構造(盛土がなく空間であること)が指摘された
ことはありません。

担当範囲外なので口出ししにくいかも知れませんが、安全検査の担当者は
この不自然な空間の存在を知っていたにも関わらずスルーしたことになります。
(盛土の話は有名です)

十分な安全意識のある人ならばそうではなかったと思います。


もう問題は土壌の安全性の話にはとどまりません。
豊洲市場のありとあらゆる設計の信頼性が失われた思わざるを得ません。

もし飛行機で設計信頼性が疑われたとしたら、とても乗れませんよね?



さてさて、どうなっていくのでしょうか・・・。

亀仙人の仕事術  48.残業の代休振替え(案) [仕事のウンチク]

こんにちは、亀仙人です。


残業削減の話をしましたが、日々の残業はある程度削減できても、
まだトータルの残業時間を押し上げてしまう要因が別にあります。

それは「休日出勤」です。

実は休日出勤には制度的に問題があります。
本項では残業・代休・有給休暇と遅刻・欠勤のあつかいについて大胆に
切り込んでみました。

亀仙人は技術屋であって人事・総務の経験はないので「何をバカなことを
言ってるんだ!」と思われた場合はご指摘ください。


*--------+---------+---------+---*
48.残業の代休振替え(案)

残業カットを止めて大幅に残業を減らした事例について前に書いた。

実はその後にプランだけして、自分自身が退職してしまったために実現
しなかった腹案があるので紹介したい。


以前に紹介した残業抑制の事例は、日常の残業を減らすためのものである。
しかしそれでもなお、一部の社員の残業は過大であった。

その原因は「休日出勤」にあった。

もし私が独立のために退職していなかったら、次に着手していたであろう
制度改革のターゲットである。


休日出勤
私の居た会社では代休制度が曖昧で、休日出勤を行なった場合に代休を
取る場合と、残業としてカウントする場合とがあった。

その区分は、
「休日に定時出社・定時退社した場合には1日の代休が与えられる。
休日の残業、深夜残業はそれぞれ割増しで残業としてカウントされる。」
というものである。
(この割増率が正しくカウントされていたかどうかは検証していないが)


ところが、連日の深夜残業のせいで休日に定時出社することは少なく、
自由な時間に出社して区切りがついたら退社するというのが担当者の
負担が少なく、必然的にこのパターンが多くなる。

しかし、定時出社でないので代休振り替えできず、すべてが残業時間
にカウントされてしまう。これが残業時間の総数を大幅に押し上げてしまう。
つまり、過大な残業は制度の不備によるものであったということである。


会社はいろんな制限が好きだ。
休日に定時出社・定時退社しないと代休を認めないなどというのは、どんな
発想で誰が考えたのだろう?製造現場のライン、事務処理など総出で出勤
してチームワークで処理する場合はそうだろうが、我々の開発現場は個人
プレーが多い。皆で揃って一斉に・・・ということはほとんどない。

それぞれがもっとも効率の良い方法を模索する、言葉を変えれば自己管理
が任されている部署である。にもかかわらず「勝手にやった場合は知らん!」
と突き放されることが多い。


そこで私案だが、
「休日に定時出社・定時退社した場合に代休1日を与える」というのは今のまま
で良いが、その上に「定時出社・定時退社でない場合は4時間の勤務で半日、
8時間の勤務で1日の代休を与える」という柔軟な運用をしたいものである。

なぜか世の殆どの経営者はこのような柔軟な思考ができずに、杓子定規的
である。(邪魔くさがりなのか)
固定した枠に嵌らなければ排除する。そしていつも社員が損をするような制度と
なってしまう。

会社の制度にこのようなアホなものが多いのは、事務方(総務・経理・人事)が
自分の仕事を増やさないように何事も一定の枠にはめたがるからだと思っている。
(事務職を見下げているわけではないが、なかなかに保守的・役人的で大幅な
 意識改革が必要である。詳しくは別項で)


代休制度
先に書いたように 

  ①休日に定時出社・定時退社した場合には代休1日を与える。
   その上に残業時間まで勤務した場合は「休日残業」「休日深夜残業」
   として割増率の異なる残業扱いとする。

  ②休日に定時出社・定時退社でない場合は4時間の勤務で半日、8時間
   の勤務で1日の代休を与える。残業としてカウントする場合は8時間までは
   「休日勤務」、その後4時間までは「休日残業」、それ以降は「休日深夜残業」
   の扱いとなり、それぞれ割増率が異なることとする。

を基本とし、さらにこれを拡張して

   ③残業4時間を半日、8時間で1日の代休に振り替えことを可能とする。
    (ここではまだ通常残業、深夜残業の割増率は考慮できていない)
 
とする。さらにさらにこれを拡張して、

  ④代休の有効期限は翌年度末までとする。(有給休暇と同等)
   管理者は社員が代休を消化できるように勤めなければならない。

としたい。また、

  ⑤多くの会社では有効期限内に有給休暇を消化しなかった場合には
   そのまま権利が消滅してしまう。一部の優良な企業では有償で買い上げ
   の場合もあるが、この場合の買い上げ費用が極端に易いこともある。

   残業とするか代休とするかは社員本人が選択可能として、有給・代休が
   消化されなかった場合には、有償で買い上げることを企業に義務付けたい。
   この場合の単価はもちろん残業単価がベースとなるべきである。



代休の有効期限
私のいた会社では代休制度が曖昧で、一つの案件が終わった直後であ
れば堂々と代休取得できたが、代休の有効期限は蜻蛉のようにはかない
ものであった。

通常は1案件終了しても客先からのクレームや追加要望に備えるために
休暇を取って不在となることは難しい。さらに私のように常時複数の案件を
抱えている者にとっては、1案件終了しても休暇どころではなかった。

結局、代休の賞味期限が曖昧ないこともあって、代休消化などはしたことが
ない。有給も殆どが未消化のままであった。


未消化休暇買取り制度
私のいた会社では、有給休暇の有効期限(翌年度末まで)を過ぎると、
未消化の有給休暇(の権利は)消滅してしまう。

「だから計画的に取得しなさいよ」というのが制度の趣旨であろうが、
日常的に激務をこなす身としては代休・有給ともに未消化のままで消えて
しまうことが殆どである。
(労働基準法上も有給休暇取得は社員の権利であって会社の義務ではない
 ので問題ないらしい)

友人の会社では未消化の有給は買取りされ、金銭に変換されて社員に
還元されると聞いたので、世間ではそのような制度も皆無ではない。
そこで、上記の代休と有給をセットにして、「未消化休暇買取り制度」
というものを提案したい。


遅刻・早退振替制度
殆どの会社では遅刻早退3回で1日欠勤という扱いになるらしい。

間違っても遅刻早退3回で有給休暇1日と振替え取得とはならず、
遅刻としてカウントされないためには、その場で半日休暇を申請しなければ
ならない。

つまり、遅刻・早退は半日休暇で代替し、欠勤回避は1日休暇で代替する。
なんとも不可思議な計算を強いられる。

しかし、今までにこの制度がおかしいと声を上げた者を今までに見たことがない。


私も声は上げていないがおかしいと感じていた。
(管理職になってしまったので声を上げ損ねたのもある)

換算する係数が異なっているのである。遅刻早退3回で1日欠勤扱い、
1日の欠勤は有給休暇1日分とイコールである。なら1/3休暇というものが
あれば換算係数が同じになるのだが、残念ながら1/3休暇というものは
制度上存在しない。


そして、遅刻早退欠勤はボーナスの査定対象となる(もちろんマイナスに)。
遅刻早退をカウントされたくなければ有給休暇半日分を差し出さなければ
ならない。そして、遅刻早退欠勤があるとと「勤務態度が悪い」として
ボーナス・昇給査定の面で不利益となる。 
 

我々のように連日の徹夜・深夜残業、明け方帰宅で定時出社というのは
大変キツい。私の上司は多少は大目に見てくれたが、それでもバツの
悪いものである。ここはきっちりと制度として「遅刻早退3回で休暇1日と
後から振り替えても可」としたいものである。

会社というのは一方では残業カット、代休消失、有給消失という重大な
損失を社員に押し付けていながら、遅刻早退欠勤をこれらの損失と相殺
してくれない、必罰オンリーである。


結論として、
残業・代休・有給と遅刻・早退・欠勤を総体的に取扱い、相互の換算を可能
とする、期限が来て消失する休暇については会社がこれらを買取る、という
柔軟な制度を確立できれば非常に有効である。

これらをきちんと制度化できれば、残業カットなどという奇妙な手法は不要である。

ほとんどの企業では古い体質から脱却できずに「遅刻・早退・欠勤は勤務
態度が悪い」と決めつけているが、いろいろ事情もあるのでこれを有給休暇と
動揺に社員の権利として扱えば、士気をそぐこともないだろうに。

昨今はフレックスタイムを導入している企業も多い。
そういうところでは遅刻・早退はそれほど問題にならないかもしれないが、
内包する問題の本質は変わらないのではないではないだろうか。


もっと進化した案
ここまで書いて根本的な問題に気がついた。残業・代休を「時間」「日」の
単位で扱うことが多いが、この単位では割増率の表現が難しい。

そこで新たに「時間外勤務の1単位」を例えば「U(ユニット)」で表して見る
ことにすると、

  ①通常残業は1時間当たり1.25U(25%増し) 
  ②深夜残業は1時間当たり1.50U(50%増し)
  ③通常休日出勤の定時内は1.25U(25%増し)
  ④通常休日出勤の残業は1.25U(25%増し)   ←休日残業と言うのはないらしい
  ⑤通常休日出勤の深夜残業は1.50U(50%増し)←平日の深夜残業と同じらしい
  ③特定休日出勤の定時内は1.35U(35%増し)
  ④特定休日出勤の残業は1.35U(35%増し)   ←休日残業と言うのはないらしい
  ⑤特定休日出勤の深夜残業は1.60U(60%増し)←平日の深夜残業と同じらしい

  (特定休日は日曜日、通常休日はそれ以外の休日)

とカウントできる。さらに

  ⑥有給休暇は1日8時間の通常勤務と換算して8.0U、半日休暇は4,0Uとする。

  ⑦代休1日は25%割増の通常残業あるいは休日定時内と換算して
   10.0U(25%増し)となる。

先に述べた遅刻早退3回で欠勤1日というのは端数が出るとややこしくなる
ので暫定的に3.0Uとする。


ここまでくれば残業・深夜残業~休日出勤・休日残業・休日深夜~
半日代休・1日代休~半日有給・1日有給、遅刻・早退・欠勤 の
それぞれの間の換算が簡単な算数でできる。

今までの変換係数のいびつな換算式よりも明確となり、当然ながら
未消化休暇もU(ユニット)単位で管理可能である。
最終的に、年度末の未消化休暇の買取り単位はU(ユニット)となる。
これは単価が明確なので、現在の曖昧な計算と比べても優れた方式と考える。


これが実現すれば公平・公正な残業・休暇システムが構築できることになる。
あとは経営者と事務方の器量(および関連法規との整合性)によることになる
が、未消化休暇の買取りという出費を伴なうので、その出費を回避しようとする
意識が代休・休暇取得を推進させるインセンティブ(経営者への)となる。

さらに、放任無管理のままで総量規制していた残業時間も、代休に置き換える
ことによってカットではなく代休取得へと変わっていくことになり、進化した残業・
休暇管理システムが構築できる。

このように制度改革されれば、社員には年度末に休暇・残業買い取りとして
ボーナスがいただけるという、なかなかの妙案である。


まあ、あまり社員の権利ばかりを主張し過ぎると甘い会社になってしまって
よくないので、定期度に緊張感があるぐらいがちょうどいいのだが。

誰か実現してくれないかな・・・?

亀仙人の仕事術  47.残業削減の必殺技 [仕事のウンチク]

こんにちは、亀仙人です。


サービス残業の話になったので、実際に管理者として過大な残業と闘った
実例を紹介します。



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47. 残業削減の必殺技

  私自身のサラリーマン時代(管理職になる前)の残業は月250時間
  を優に越えていた。

  自ら望んだスキルアップのためとは言え365日24時間仕事をしていた
  わけであるからこれぐらいになるのも当然(かなり控えめな数字です)だが、
  複数のプロジェクトを同時にこなしていたので、決してダラダラと無駄な時間を
  過ごしていたわけではないと確信している。


  私のいた会社では50時間を超える残業はカットされた。
  たとえトラブルがあろうが仕様の矛盾があろうが無理な納期であろうが酌量は
  なく、総務で無条件にカットされた。


  もともとはそんなにブラックな会社ではなかったが、私が入社したころから
  業績がアップし始めたのか、業務ボリュームが一気に増大した。

  若い私は、自らのスキルアップを目指してこれらの業務に果敢に挑戦し、
  3年ほどで大きく習熟度を上げることに成功したのだが、その間に社内の
  雰囲気が「残業当たり前」な感じになってしまい、私も特に違和感は感じて
  いなかった。


  しかし年月が経ち、自分が管理職になったときに、若い部下たちにも同じことを
  強いるのか?それが当たり前で良いのか?本来あるべき姿は何か?と自問
  していたところに、ある日、例のコワモテK社長(外部からヘッドハンティングで来た)
  から「社員の残業が多すぎるからなんとかしろ!」と指示があった。


  私は、まず第一段階の現状分析として次の2項目を提示した。

   ①現在の状況では残業管理はなされておらず、集計時に総量規制
    (上限50時間以上は無条件にカット)のみが行なわれている。

   ②実際の社員の平均残業時間は120時間(70~200時間)にも達し、
    残業カット制度の下で毎月膨大なサービス残業を強いられている。
    これは明らかに違法な状態であり、速やかに適正な水準に収束させる
    必要がある。
    (当時はコンプライアンスという言葉はなかった?)

  これについては異論を挟む余地はないであろう。

  違法な状態を放置しているというのは、会社としての危機管理の面からも
  看過できず、速やかに対処する必要があることは明白であった。

  (現在のようにサービス残業がニュースになるような時代でもなく、
   労基に駆け込まれない限りは水面下で当たり前に横行していた。)


  この2項目を経営者に納得させた上で、次のように展開した

   ③本来、管理者による適正な残業管理がなされるべきものが実行されて
    おらず、社員個々人の自己管理に任し(放任)た上で、集計時に機械的な
    総量規制のみが行なわれている。これは重大な管理放棄であり、速やか
    に本来あるべき姿に引き戻す必要がある。

     これを実現するためには以下の事が必要である。

     A)現在の残業規制(50時間でカット)を一旦撤廃する

     B)社員の残業時間の管理は管理者(課長)が職責をもって行ない、
       課長が認定したものを部長以上が事後に改ざんしないこととする。

     C)社員の残業時間の管理は日々管理者が行ない、適正な水準を
        超えないように調整する全責任を管理者(課長)が負う

  やや抵抗はあったものの、この項目について認めさせ、さらに詳細な制度
  設計を以下のように行なった。


   ④本来あるべき姿として、服務規程にあるように残業は
      「業務遂行の必要がある場合に会社が命令する」
    ものに引き戻す。

    現在のように放置しておいて事後に総量規制のみを行なう方式はもはや
    管理とは言えない。そこで、

     D)残業は、その必要が生じた時点において会社(管理者)が社員に
       命令する方式とする。

       具体的には、毎日午後3時までに管理者が発行する「残業命令書」
       をもって社員に残業を命ずるものとする(書面化)。

       残業を命ずるためには管理者は個々の社員の業務状況を正確に
       把握しておかなければならず、これは管理者として本来の職責を
       果たすことに他ならない。

     E)管理者は各社員の残業状況を日々把握している(はず)ので、一部の
       社員に過大な負荷が集中するような状況があれば原因を解明し、
       人員配置・環境整備その他の処置を速やかに講じなければならない。

       原因が人員不足、機材不備等の経営資源にかかわるものである場合、
       管理者は経営者に対して適切なアクションを起こす。
       (ここから先は経営者の資質が問われる)

       つまり、残業はその発生時点から管理者のコントロール下に置かれ
       るこことなり、管理者はそのすべてに責任を負う。



  多少の紆余曲折はあったが、以上のような論旨が受け入れられて、この制度
  での残業管理を行なうこととなった。

  「多少の紆余曲折」とは

   1)現在の総量規制を撤廃するということに経営者が強い難色を示した。
     (当たり前か)

     当然ながら、現在の実残業時間(平均120時間)のままで総量規制を
     撤廃すれば、人件費が大幅に増えることになり、経営者としては容認
     しがたい内容である。

   2)予想はしていたが、私以外の管理者は責任を負うことを極端に嫌う。

     管理者の責任を強く求めるこのスタイルに対しては、同僚の他の
     管理者からの抵抗があった。
     (嫌なら課長をやめろ!と一喝した)

   3)部下である一般社員からも、管理体制の強化に対する不安の声が
     あがった。

     この制度においては管理者の資質が強く問われることとなるので、
     無能な上司によって制度の本質を見誤った運用がなされた場合に
     社員の不利益になる心配があった。

     ※これに対しては、私自身が制度全体の運用の実行管理責任者と
      なって、制度本来の目的が正しく遂行されるよう、各管理者を
      監視・指導することで社員の了解を得た。



  というものであった。

  しかし、これらはすべて想定範囲内のことであり、「最悪の場合にはいつでも
  腹を切る」覚悟であることを常日頃より公言していることから、全責任を負うこと
  と引き換えに一任してもらった。


  制度実現には経営者・管理者・社員の意識改革が不可欠であるため、効果確認
  目標は6ケ月後以降とすることにした。つまり、6ケ月以内に目に見える結果が
  得られない場合は、私自身が社内的に非難されることになるわけである。
  (正しく運用さえできればそんな可能性はないはずだが)


  新制度での運用が始まり、毎日午後3時頃には部下とショートミーティングを
  行なうこととした。自分の部下の業務内容は当然ながら把握しているので、
  当日の状況の変化や業務の進捗状況などによる微調整について、担当者
  自身の口からこれらの情報を聞き出すことになる。

  残業命令書に記載する項目は

   ①業務内容(詳細に)
   ②残業予定時間
   ③残業食必要の有無・希望メニュー

  の3項目である。

  これを部署毎に1枚の用紙に書き込む。3時以降に状況が変化した場合は
  修正し、内容を吟味して再度命令する。


  基本は、明日でもいい業務は今日しないこと。無意味にだらだらと居続ける
  のではなく、◯時間で仕上げるという目標を設定すること。調子に乗って終電を
  逃してしまってやむなく徹夜残業などという意味のない残業を回避すること。
  付き合い残業を排除すること等々であった。


  残業命令書はボールペン記入とし、修正は原則禁止。ただし、予定よりも早く
  終了して、残業短縮となる方向の修正はOK(赤ペンを使用)。増える方向の
  修正は管理者の訂正印を必須とし「後から残業」を排除した。

  修正の必要がある場合には管理者とのショートミーティングを再度行なう。
  こうやって残業時間の管理は粛々と運用された。



  新制度にはうれしい副産物があった。
  一つは、管理者として社員の担当する業務の状態が、これまで以上に手に取る
  ようにわかるようになったこと。

  もう一つは、残業食の必要量が午後5時までにほぼ確定し、事務員は事前に
  残業食の必要量を把握することができるようになったこと。定時頃に各社員の
  ところを回って個々に聞き出すのとは違って、管理者のところに来ればその部署の
  集計された数字が見られる。

  手間の大小としては大きくはないが、一目で分かる状態というのは好ましいもの
  であった。また、事務員が定時に帰る際には特に有効だった。


  そして、最大の副産物が管理者の意識改革である。

  受託開発という業務が主体である以上、納期設定はユーザーの意向に大きく
  左右(そのすべてが日程短縮方向であるが)される。しかし、各担当者の業務
  詳細を把握し過大な残業を回避するという目的を持つと、計画の立案時点で
  根性論で乗り切るようなスタイルから、業務の効率を重視するスタイルに変わって
  いった。

  過大な残業や根性で業務を推進するのではなく、マネージメントで効率を確保
  する理想的な(これぞ亀仙人の仕事術!という)スタイルになっていった。


  1ヶ月目を締めてみると、大半の社員の残業時間は70時間を下回った。
  一部の過酷な業務を担当している社員は相変わらず100時間を超えたが、それでも
  50時間ほど減っていた。滑り出しは上々と言えた。
  (経営陣と他の管理者たちはお手並み拝見とばかりにニヤニヤと見ていた)


  3ヶ月目。半分以上の社員は35時間、多い者でも70時間、平均45時間程度と
  なった。個々にはまだ50時間をオーバーしている者が存在するが、今までの
  1/3近い。

  今までの放置主義の残業規制の生産性がいかに低いもので、新制度が正しく
  機能するとどれほど生産性が向上して無駄な残業を抑制できたかが明白である。


  この頃になると、若い社員同士で計画を立てて「今日は8時から皆でボーリング
  に行きます」と言い出すようになった。20代の若者が人生をすり減らすようにして
  過大な残業に従事し、時間的な余裕がまったくない状態だったのが、退社後に
  別なことができる時間ができた。これは発案者にとっても望外の喜びとなった。


  この余力をリフレッシュに当てるもよし、自己啓発に当てるもよし、いつも部下に
  言っている「会社に拘束される8時間、睡眠のための8時間を除く残りの8時間を
  有効に使ったものが勝者になる」ということを実践する者が出てくるだろう。


  平均残業時間は45時間程度なので、総量規制の50時間と比較して人件費と
  しては会社が大きな得をしたわけではない。しかし、業務の大幅な効率化、
  社員の心身の健康、若手社員相互の親睦、社内の空気など、この制度改革は
  大きな成果を得たものと自負している。

  何よりも、自分自身が管理者として成長できたことを実感した案件であった。



 

亀仙人の仕事術  46.残業カットすると残業は減らずに不満が増える? [仕事のウンチク]

こんにちは、亀仙人です。


厚生労働省が残業のあり方を見直すという話を聞きましたので、
亀仙人の仕事術の中から、残業について書いてみたいと思います。



*--------+---------+---------+---*
46.残業カットすると残業は減らずに不満が増える?

  残業カットをする会社は多い。

  部下の業務負荷をコントロールするのは管理者の大事な職務だが、
  これを放棄しているでのである。

  「◯◯時間以上残業しても残業手当は出ませんよ。」ということが、
  そこかしこで横行しているのが現状である。

  
  残業制限の時間内で業務が完遂できれば何も問題はないが、そもそも
  管理者が職責を放棄しているわけであるから、仕様は曖昧、計画は杜撰、
  予算・人員は不十分、納期はタイトと相場は決まっている。


  社員が責任感あふれるまじめな青年であるなおさら、サービス残業が
  横行するわけであるが、ある日まじめな社員はふと思う。
  
  「オレはなんでこんなに苦しい思いをしているんだろう?」と。


  残業が増える本当の原因は

   ①担当者のスキルが不足している。

   ②担当者のモチベーション・集中度が低下している。

   ③仕様が曖昧でプロジェクト開始後に問題が続出する →余分な時間を食う。

   ④計画が杜撰で外部工程(部材納期、外注など)の遅れのあおりを食う。

   ⑤当初から予算・人員が不足しており、無理を承知のプロジェクトである。

   ⑥突発的なトラブルで思わぬ工数を食う。

   ⑦作業環境が悪くて効率が上がらない。

  などが挙げられるが、さてこれらの事象は一体誰の責任だろうか?


   ①担当者のスキルが不足しているのがあらかじめわかっているのに、
    納期設定をする上で何も配慮していない。

   ②担当者自身の資質もあるが、他の雑事で集中した時間を確保できない。

   ③プロジェクト開始前に仕様を吟味して確定しておく。不確定要素を
    極力排除し、後出しの仕様に対しては必要な時間・費用を確保する。

   ④そもそも外注を計画通りに動かすような段取りをしていないので、
    外部工程に無理があれば遅れるのは必然。

   ⑤無理な計画は必ず破綻する。

   ⑥リスク管理が不十分で突発的な事態に対応できない。

   ⑦非効率な環境であるのに効率的な作業を要求されている。


  以上でお分かりだと思うが、これらはすべて管理者の責任である。

  つまり、管理者が正しく職責を全うしていれば、サービス残業は発生
  しない。


  にもかかわらず世間全般でサービス残業が横行するのは、サービス残業の
  原価がタダだからである。言い換えれば、サービス残業がいくら増えても
  会社は1円も損をしない(電気代はかかるが)。
  損をするのは当の社員だけである。

  しかし被雇用者がこれらについて声を上げると、社内での居心地が著しく
  悪化するのが常であるから誰も声を上げない。

  強い組合でもあれば別だが、いまどきの組合はそんなところにフォーカス
  していない。もし強い組合があれば経営者ともども共倒れとなるだろう。


  かくして一般社員のみにその負担が集中するわけであるから、不満は
  蓄 積する。そして、経営者は側は原価0円の仕事をさせているわけだから
  1円も損をしないばかりかウハウハである。

  したがって本来定時内で処理できる量の数倍ものボリュームの業務を
  社員に「責任」という言葉とともに押し付けてしまう。


  このようにしてサービス残業が横行する企業では、業務の効率をUPさせて
  残業を減らそうという機運にはならない。

  なぜならば、経営環境の厳しい昨今、原価0円の仕事は収益確保には
  欠かせなし、これに対するペナルティのないに等しい。
  誰も過大となる一方のサービス残業を何とかしようとはしてくれない。


  結論として「残業カットすると残業は減らずに不満が増える」ということにしか
  ならないのである。


  ごくたまに(本当に稀だが)、退社した元社員が労働基準監督局にたれ込んだ
  場合にはなんらかの動きが出ることはあるが、一般的にはない。



LED照明は眼に悪いのか?

こんにちは、亀仙人です。


歳のせいか、どんどん眼が悪くなってきています。

ど近眼で老眼なため、裸眼だと眼前10cm程だけが見えて、それより遠くも近くも見えません (T_T)
そのため、起きている間はずっとメガネをかけています。


それは老眼のせいである種仕方がないのですが、最近は細かいものが見えません。
「亀仙人のハンダ付け大作戦」で書きましたが、ピントが合っても見えない状況です。
加齢黄斑変性を疑って眼科に行きましたが、網膜は問題ありませんでした。



昨今はモニタやLEDの照明のブルーライトが眼に悪いと言われています。

蛍光灯とスペクトル(色の成分)は似ていますが、蛍光灯はそこそこなだらかに
発色していますが、LEDは色の抜けた部分があります。トータルで白く見えるのは
目の特性でごまかされているだけです。

このような事情で、LEDの方が目にストレスとなっているような気がします。


で気になるのが自宅の天井の照明です。

昨年、天井照明を40W 直管蛍光灯からLEDに替えたのですが、どうもそれと眼が悪くなったのが
関係あるかもしれないと思って、このたび蛍光灯に戻しました。

それと同時に、ホームポジションとの関係で常時眼に入ってくる直接光が悪いかもしれない
(いいとは思いません)と思ったので、直接光を遮る遮光板を設置しました。

aa7.jpg


こんな感じです(笑)

仮設ですが、素材はプラダンを窓に貼った切れっ端で材料費はゼロ。



手元側は少し暗くなりましたが、本を読むときはスタンドをつけるので良しとします。



これで何か改善できるといいのですが・・・。

これから検証して、また報告いたします。

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